【プレスリリース】当院の河原 由恵 皮膚科部長 が参加した医師主導治験によりイラリス®皮下注射液150mgのシュニッツラー症候群への効能追加が承認されました
イラリス®皮下注射液150㎎のシュニッツラー症候群への効能追加
ー 世界初の適応拡大の基となる成果は、医師主導治験によって示されました ー
ー 世界初の適応拡大の基となる成果は、医師主導治験によって示されました ー
概要
● 京都大学大学院医学研究科・皮膚科学准教授・神戸 直智、同・皮膚科学/先端医療基盤共同研究講座特定准教授・中溝 聡、同・内科学講座臨床免疫学准教授・吉藤 元、同・血液内科学/検査部・細胞療法センター助教・城 友泰、同・小児科学講師・井澤 和司、および和歌山県立医科大学・分子遺伝学教授・井上 徳光、兵庫医科大学・皮膚科学主任教授・金澤 伸雄らの研究グループは、京都大学医学附属病院の他、高知大学医学部附属病院(皮膚科講師・山本 真有子)、地方独立行政法人総合病院国保旭中央病院(アレルギー・膠原病内科部長・加々美 新一郎および糖尿病代謝内科部長・竹村 浩至)、一般財団法人神奈川県警友会けいゆう病院(皮膚科部長・河原 由恵)との多施設共同治験として、日本人のシュニッツラー症候群患者に対するカナキヌマブ(商品名:イラリス®)の有効性と安全性を検討する医師主導治験(jRCT2051220139)を実施しました。その結果として得られた、2025年4月および10月に日本アレルギー学会の英文学術誌「Allergology International」に掲載された有効性と安全性に関する成果に基づいて、ノバルティスファーマ株式会社(以下、ノバルティス)は2025年5月に適応追加の申請を行い、2026年2月19日にシュニッツラー症候群への効能追加の承認を取得しました。
● 京都大学大学院医学研究科・皮膚科学准教授・神戸 直智、同・皮膚科学/先端医療基盤共同研究講座特定准教授・中溝 聡、同・内科学講座臨床免疫学准教授・吉藤 元、同・血液内科学/検査部・細胞療法センター助教・城 友泰、同・小児科学講師・井澤 和司、および和歌山県立医科大学・分子遺伝学教授・井上 徳光、兵庫医科大学・皮膚科学主任教授・金澤 伸雄らの研究グループは、京都大学医学附属病院の他、高知大学医学部附属病院(皮膚科講師・山本 真有子)、地方独立行政法人総合病院国保旭中央病院(アレルギー・膠原病内科部長・加々美 新一郎および糖尿病代謝内科部長・竹村 浩至)、一般財団法人神奈川県警友会けいゆう病院(皮膚科部長・河原 由恵)との多施設共同治験として、日本人のシュニッツラー症候群患者に対するカナキヌマブ(商品名:イラリス®)の有効性と安全性を検討する医師主導治験(jRCT2051220139)を実施しました。その結果として得られた、2025年4月および10月に日本アレルギー学会の英文学術誌「Allergology International」に掲載された有効性と安全性に関する成果に基づいて、ノバルティスファーマ株式会社(以下、ノバルティス)は2025年5月に適応追加の申請を行い、2026年2月19日にシュニッツラー症候群への効能追加の承認を取得しました。

蕁麻疹様皮疹や発熱・倦怠感をきたすシュニッツラー症候群に対して、海外には有効な治療薬があるが、日本では使用できなかった。そこで、国内の複数施設で医師主導治験を実施し、その成果によって、世界初となる効能が追加された。(© 2026 Naotomo Kambe. Image created with ChatGPT5.2)
1.背景
● シュニッツラー症候群は、慢性的な蕁麻疹様皮疹や発熱、関節痛などを特徴とするまれな自己炎症性疾患です。海外で治療の第一選択として使用されている薬剤(アナキンラ)が国内ではいずれの疾患に対しても適用がないこともあり、国内では治療選択肢が限られていました。
本疾患では、炎症を引き起こすサイトカインである IL-1β が病態に深く関与していることが知られており、海外では IL-1β を標的とした治療薬であるカナキヌマブが有効であることが報告されていましたが、日本人患者における有効性と安全性を検討したデータは十分ではありませんでした。
このような背景のもと、国内での治療環境を改善することを目的として、医師主導治験を実施しました。
2.研究手法・成果
● 本治験は、日本人シュニッツラー症候群患者を対象とした、医師主導・多施設共同・単群・非盲検試験として実施され、カナキヌマブの有効性および安全性を検討しました。
試験では、皮膚症状や全身症状の改善度、炎症マーカーの変化、安全性指標などが詳細に解析されました。
その結果、多くの患者において症状の速やかな改善が認められ、安全性についてもこれまでに報告されている知見と整合する結果が得られました。
これらの成果に基づき、本治験データを用いて、ノバルティスはシュニッツラー症候群に対するカナキヌマブの適応追加の申請を行い、このたび世界で初めてシュニッツラー症候群に対して薬事承認を得ることができました。
3.波及効果、今後の予定
● 本承認により、これまで治療選択肢が限られていたシュニッツラー症候群患者に対し、科学的根拠に基づく治療が国内において正式に提供可能となります。
● シュニッツラー症候群では、長期経過の中で血清 IgM 値が徐々に上昇し、一部の患者では単クローン性 IgM 血症から血液腫瘍へ進展することが知られています。本治験では、2年以上にわたる継続観察の結果、カナキヌマブ投与により血清 IgM 値の上昇が抑制されていることが確認されました。より長期的な観察が必要になりますが、IL-1βを制御することで、単クローン性 IgM 血症から血液腫瘍への進展が抑制される可能性があります。
● 本研究は、希少疾患領域において医師主導治験が果たす役割の重要性を示すとともに、産学連携による薬事承認の一つのモデルケースになるものと考えられます。
4.研究プロジェクトについて
● 日本医療研究開発機構(AMED) の難治性疾患実用化研究事業「本邦のシュニッツラー症候群患者の急性期炎症所見に対するカナキヌマブを用いた多施設医師主導治験(JP24ek0109582)」および令和7年度厚生労働科学研究費補助金の難治性疾患政策研究事業「自己炎症性疾患とその類縁疾患における、移行期医療を含めた診療体制整備、患者登録推進、全国疫学調査に基づく診療ガイドライン構築に関する研究(研究代表:西小森 隆太・久留米大学)」および「皮膚の遺伝関連性希少難治性疾患群の網羅的研究(研究代表:橋本 隆・大阪公立大学)」の研究助成を受け、京都大学医学部先端医療研究開発機構(iACT) の支援の下で実施しました。治験薬であるカナキヌマブはノバルティスの医師主導臨床研究の支援手順に基づき、無償提供を受けました。
<用語解説>
● シュニッツラー症候群:慢性的な蕁麻疹(じんましん)様皮疹と単クローン性IgM血症(後述)に加え、発熱や関節痛などの全身症状を伴うことが特徴で、成人になって発症する自己炎症性疾患(後述)の1つに分類されています。1972年に初めて報告された病気で、日本では、2022年までに36人の方がシュニッツラー症候群と診断されています。
● 単クローン性IgM血症:血液中の抗体の一種である IgM が、同一の型で増加している状態を指します。多くの場合は無症状ですが、シュニッツラー症候群では診断の重要な手がかりとなります。
● 自己炎症性疾患:細菌やウイルスなどの感染がないにもかかわらず、体の中で炎症が繰り返し起こる病気の総称です。免疫の働きを調節する仕組みに異常が生じ、発熱や皮疹、関節痛などの症状が現れます。アレルギーや自己免疫疾患とは異なる病態として1999年に初めて疾患概念が提唱されました。
● イラリス®:イラリスは、ノバルティスが創薬したIL-1β(後述)の働きを抑える注射薬で,一般名はカナキヌマブです。米国および欧州では2009年にクリオピリン関連周期性症候群(CAPS)の治療薬として承認され、日本においても2011年9月に承認されました。その後、既存治療で効果不十分な家族性地中海熱(FMF)、TNF受容体関連周期性症候群(TRAPS)および高IgD症候群(HIDS)、さらに全身性若年性特発性関節炎(sJIA)、成人発症スチル病(AOSD)に対する効能又は効果が追加されています。
● IL-1β(インターロイキン1β):体内で炎症を引き起こす役割をもつサイトカインと呼ばれるたんぱく質の1つです。免疫反応に重要な働きをしますが、過剰に作用すると発熱や痛みなどの原因となります。
● 医師主導治験:医師や研究者が主体となって実施する臨床試験です。医療現場での必要性に基づき行われ、特に患者数の少ない希少疾患において、新たな治療法の確立に重要な役割を果たします。
<研究者のコメント>
● 有効性が報告されている薬剤が存在し、実際に投与が必要な患者さんが目の前にいても、保険適用がないために使用できない。それならば、医師主導治験という枠組みを用いれば、薬剤を患者さんに届けることができるのではないか。その思いが、本研究の出発点でした。本研究の実施にあたっては、薬剤提供をめぐる交渉や契約、研究資金の確保、規制当局との協議など、多くの課題に直面しました。しかし、患者さんに有効な治療を届けたいという共通の思いをもった多くの方々の支えがあり、本日の適用拡大に至ることができました。一方で、なぜこの薬剤がシュニッツラー症候群に有効なのか、その機序は十分に解明されていません。今後も、目の前の患者さんが示す症状に真摯に向き合いながら、その本質的な理解を目指した研究を続けていきたいと考えています。
● シュニッツラー症候群は、慢性的な蕁麻疹様皮疹や発熱、関節痛などを特徴とするまれな自己炎症性疾患です。海外で治療の第一選択として使用されている薬剤(アナキンラ)が国内ではいずれの疾患に対しても適用がないこともあり、国内では治療選択肢が限られていました。
本疾患では、炎症を引き起こすサイトカインである IL-1β が病態に深く関与していることが知られており、海外では IL-1β を標的とした治療薬であるカナキヌマブが有効であることが報告されていましたが、日本人患者における有効性と安全性を検討したデータは十分ではありませんでした。
このような背景のもと、国内での治療環境を改善することを目的として、医師主導治験を実施しました。
2.研究手法・成果
● 本治験は、日本人シュニッツラー症候群患者を対象とした、医師主導・多施設共同・単群・非盲検試験として実施され、カナキヌマブの有効性および安全性を検討しました。
試験では、皮膚症状や全身症状の改善度、炎症マーカーの変化、安全性指標などが詳細に解析されました。
その結果、多くの患者において症状の速やかな改善が認められ、安全性についてもこれまでに報告されている知見と整合する結果が得られました。
これらの成果に基づき、本治験データを用いて、ノバルティスはシュニッツラー症候群に対するカナキヌマブの適応追加の申請を行い、このたび世界で初めてシュニッツラー症候群に対して薬事承認を得ることができました。
3.波及効果、今後の予定
● 本承認により、これまで治療選択肢が限られていたシュニッツラー症候群患者に対し、科学的根拠に基づく治療が国内において正式に提供可能となります。
● シュニッツラー症候群では、長期経過の中で血清 IgM 値が徐々に上昇し、一部の患者では単クローン性 IgM 血症から血液腫瘍へ進展することが知られています。本治験では、2年以上にわたる継続観察の結果、カナキヌマブ投与により血清 IgM 値の上昇が抑制されていることが確認されました。より長期的な観察が必要になりますが、IL-1βを制御することで、単クローン性 IgM 血症から血液腫瘍への進展が抑制される可能性があります。
● 本研究は、希少疾患領域において医師主導治験が果たす役割の重要性を示すとともに、産学連携による薬事承認の一つのモデルケースになるものと考えられます。
4.研究プロジェクトについて
● 日本医療研究開発機構(AMED) の難治性疾患実用化研究事業「本邦のシュニッツラー症候群患者の急性期炎症所見に対するカナキヌマブを用いた多施設医師主導治験(JP24ek0109582)」および令和7年度厚生労働科学研究費補助金の難治性疾患政策研究事業「自己炎症性疾患とその類縁疾患における、移行期医療を含めた診療体制整備、患者登録推進、全国疫学調査に基づく診療ガイドライン構築に関する研究(研究代表:西小森 隆太・久留米大学)」および「皮膚の遺伝関連性希少難治性疾患群の網羅的研究(研究代表:橋本 隆・大阪公立大学)」の研究助成を受け、京都大学医学部先端医療研究開発機構(iACT) の支援の下で実施しました。治験薬であるカナキヌマブはノバルティスの医師主導臨床研究の支援手順に基づき、無償提供を受けました。
<用語解説>
● シュニッツラー症候群:慢性的な蕁麻疹(じんましん)様皮疹と単クローン性IgM血症(後述)に加え、発熱や関節痛などの全身症状を伴うことが特徴で、成人になって発症する自己炎症性疾患(後述)の1つに分類されています。1972年に初めて報告された病気で、日本では、2022年までに36人の方がシュニッツラー症候群と診断されています。
● 単クローン性IgM血症:血液中の抗体の一種である IgM が、同一の型で増加している状態を指します。多くの場合は無症状ですが、シュニッツラー症候群では診断の重要な手がかりとなります。
● 自己炎症性疾患:細菌やウイルスなどの感染がないにもかかわらず、体の中で炎症が繰り返し起こる病気の総称です。免疫の働きを調節する仕組みに異常が生じ、発熱や皮疹、関節痛などの症状が現れます。アレルギーや自己免疫疾患とは異なる病態として1999年に初めて疾患概念が提唱されました。
● イラリス®:イラリスは、ノバルティスが創薬したIL-1β(後述)の働きを抑える注射薬で,一般名はカナキヌマブです。米国および欧州では2009年にクリオピリン関連周期性症候群(CAPS)の治療薬として承認され、日本においても2011年9月に承認されました。その後、既存治療で効果不十分な家族性地中海熱(FMF)、TNF受容体関連周期性症候群(TRAPS)および高IgD症候群(HIDS)、さらに全身性若年性特発性関節炎(sJIA)、成人発症スチル病(AOSD)に対する効能又は効果が追加されています。
● IL-1β(インターロイキン1β):体内で炎症を引き起こす役割をもつサイトカインと呼ばれるたんぱく質の1つです。免疫反応に重要な働きをしますが、過剰に作用すると発熱や痛みなどの原因となります。
● 医師主導治験:医師や研究者が主体となって実施する臨床試験です。医療現場での必要性に基づき行われ、特に患者数の少ない希少疾患において、新たな治療法の確立に重要な役割を果たします。
<研究者のコメント>
● 有効性が報告されている薬剤が存在し、実際に投与が必要な患者さんが目の前にいても、保険適用がないために使用できない。それならば、医師主導治験という枠組みを用いれば、薬剤を患者さんに届けることができるのではないか。その思いが、本研究の出発点でした。本研究の実施にあたっては、薬剤提供をめぐる交渉や契約、研究資金の確保、規制当局との協議など、多くの課題に直面しました。しかし、患者さんに有効な治療を届けたいという共通の思いをもった多くの方々の支えがあり、本日の適用拡大に至ることができました。一方で、なぜこの薬剤がシュニッツラー症候群に有効なのか、その機序は十分に解明されていません。今後も、目の前の患者さんが示す症状に真摯に向き合いながら、その本質的な理解を目指した研究を続けていきたいと考えています。
<論文タイトルと著者>
タイトル:Investigator-initiated, multi-center, single-arm, open-label study of the effectiveness of canakinumab in Japanese patients with Schnitzler syndrome.
(日本人シュニッツラー症候群患者におけるカナキヌマブの有効性を評価する医師主導多施設共同単群非盲検試験)
著 者:Kambe N, Yamamoto M, Takemura K, Kagami SI, Kawahara Y, Yoshifuji H, Jo T, Izawa K, Nakamizo S, Inoue N, Ito T, Amino Y, Ibi Y, Morita S, Kanazawa N.
掲 載 誌:Allergology International (日本アレルギー学会英文誌). 2025; 74(2): 254-262.
DOI:10.1016/j.alit.2024.10.001.
タイトル:Neutrophils predominate as IL1B-expressing cells in Schnitzler syndrome: Insights from the SCan study to evaluate the efficacy and safety of canakinumab in Japanese patients.
(シュニッツラー症候群において IL1B を発現する主要細胞は好中球である:日本人患者におけるカナキヌマブの有効性・安全性を検討した SCan 試験からの知見)
著 者:Kambe N, Inoue N, Ueki Y, Zhou Y, Yonekura S, Katsuo K, Nakamizo S, Tsujimoto H, Ohtani K, Yoshifuji H, Jo T, Izawa K, Yamamoto M, Takemura K, Kagami SI, Kawahara Y, Amino Y, Ibi Y, Morita S, Kanazawa N.
掲 載 誌:Allergology International (日本アレルギー学会英文誌). 2025; 74(4): 605-615.
DOI:10.1016/j.alit.2025.04.003.
タイトル:Investigator-initiated, multi-center, single-arm, open-label study of the effectiveness of canakinumab in Japanese patients with Schnitzler syndrome.
(日本人シュニッツラー症候群患者におけるカナキヌマブの有効性を評価する医師主導多施設共同単群非盲検試験)
著 者:Kambe N, Yamamoto M, Takemura K, Kagami SI, Kawahara Y, Yoshifuji H, Jo T, Izawa K, Nakamizo S, Inoue N, Ito T, Amino Y, Ibi Y, Morita S, Kanazawa N.
掲 載 誌:Allergology International (日本アレルギー学会英文誌). 2025; 74(2): 254-262.
DOI:10.1016/j.alit.2024.10.001.
タイトル:Neutrophils predominate as IL1B-expressing cells in Schnitzler syndrome: Insights from the SCan study to evaluate the efficacy and safety of canakinumab in Japanese patients.
(シュニッツラー症候群において IL1B を発現する主要細胞は好中球である:日本人患者におけるカナキヌマブの有効性・安全性を検討した SCan 試験からの知見)
著 者:Kambe N, Inoue N, Ueki Y, Zhou Y, Yonekura S, Katsuo K, Nakamizo S, Tsujimoto H, Ohtani K, Yoshifuji H, Jo T, Izawa K, Yamamoto M, Takemura K, Kagami SI, Kawahara Y, Amino Y, Ibi Y, Morita S, Kanazawa N.
掲 載 誌:Allergology International (日本アレルギー学会英文誌). 2025; 74(4): 605-615.
DOI:10.1016/j.alit.2025.04.003.
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